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女将の俳句
女将の受賞 女将の受賞
女将が詠んだ俳句を定期的に掲載しています。
箱根の季節感や、当荘の雰囲気が少しでも皆様に伝わればと思っております
2002年2月24日
雛の琴ためし弾きして飾りけり
自分の嫁入り道具の雛人形を娘、今では孫のために飾り付けしている時、ひな祭りの歌にも出てくる五人ばやしの楽器、ミニチュアの琴の弦を弾いてみて壊れた所もなく無事、お雛様に再会できたほっとした気持ちと箱根に嫁いで38年間欠かさず飾り付けできる女性として喜びの思いを句にしました。
2002年3月6日
能面を取り汗ぬぐふ夜の桜
能舞台は今静かに終わった。楽屋に帰って能面を取るとしとどの汗であった。今日の舞台は成功であったと安堵(あんど)する役者のふと見上げた夜の桜、それはひときわ静かに輝いているのであった。
2002年3月20日
花冷えの膝にのせては衣をたたむ
( 衣は い と読みます。)
箱根も15日も早く桜がほころびはじめました花冷えのこの頃です。
華やかな花時にやってくる冷気・・・・・・・・お花見から帰って、かけていたショールを膝の上でたたみました。
2002年4月12日
うぐいすの誘われて鳴き応へ鳴く
(応はこたえと読みます)
当荘前のうぐいす坂では、あちこちからうぐいすの美しい声が聞こえてきております。今、鳥たちは恋の季節で大忙しです。
四月は人も鳥も新しい出会いに心弾む素敵な季節ですね。
2002年5月1日
月に雲かかりて八十八夜かな
立春から数えて八十八日め、夕方七時頃まで明るく夜明けはことさら早くなる。そして夏もだんだんと近づいてくる。
雲のかかった今日の月、新茶のごとく薄く緑をおびていた。
2002年5月14日
紫陽花の開きはじめのうすみどり
白、薄緑、青、青紫、赤紫、次々と色が変わるので、この花は七変化とも言われ、雨上がりや早朝にみずみずしく美しい。
箱根のきれいな空気をいっぱい吸って湯本から強羅温泉へ、
里から山へと咲き始めます。


そして夏霧に合う度、紫の色を日ごとに深めていきます。
強羅では8月中旬頃まで見られます。
2002年5月24日
山の湯の霧にほぐれし箱根バラ
5/23庭の箱根バラが開き始めました。例年より10日以上も早い開花です。
箱根ではサンショウバラを箱根バラと呼び、箱根町の花に指定しています。桜紙を5枚貼り付けたような淡いピンクの花で葉はサンショウの葉にそっくりです。
朝開き夜には散ってしまう大変命の短い1日花、散った花びらの一枚一枚にもたまらないいとしさと旅情があります。
2002年6月 9日
岩たばこ濡れて夜明けの星低し
岩たばこは葉がたばこに似て湿った岩壁に生える。夏、長い花茎を伸べて頂きに紫色の花をつける。
稜線を連ねる山、まだ光りを残す星、そんなさわたかな大景が、かれんな花のいのちをシンにしてひろがる。
2002年6月16日
梅雨晴れ間つるりとむけし黒玉子
先日、梅雨の合間、孫を連れて6月リニューアルしたばかりのロープウェーの初乗りに大涌谷まで行って参りました。
この大涌谷の名物は地獄谷でゆでた黒玉子です。温泉の成分により真っ黒に黒光りした玉子は1つ食べれば7年長生きすると言われております。
当日はワールドカップのせいか外国のお客様がたくさん観光にお越しで、みなさんこの黒玉子をめずらしそうにたくさんほうばっていらっしゃいました。
2002年6月23日
紫陽花にスイッチバックの灯が届く
青梅雨と呼ばれる六月、箱根の山には紫陽花がよく似合います。
咲き出せば雨、散る時も雨、この花はまさに箱根の雨の花ごよみです。
たっぷりと霧を含み瑞々しく涼やかな紫陽花、ジグザグに登る電車、スイッチバックの灯りにひときわ鮮やかに、雨の箱根を謳歌しながら少しずつ色を深めてまいります。
あじさい電車のライトアップは七月七日までです。
2002年6月30日
一山の霧にまぎれず山ぼうし
(一山はいっさんと読む)
梅雨明けをもう待ちきれないとばかりに庭の山ぼうしの花が空を見上げて枝いっぱいに白い花を咲かせはじめました。この花は霧のかかった夕方でもひときわめだちます。四弁の花と見えるのは葉の変形した包でその中心に緑色をした花のかたまりがあります。これを法師の頭巾に見立ててこの名が付けられました。当荘周辺では今が見頃ですが、先日ロープウェーで行った噴煙わく大涌谷あたりでは、やはり花時が遅くどの花もまだ花ごしらえの最中でした。
2002年7月14日
山百合の香が乗るこみし登山駅
(香は、か と読みます)
百合は花が大きくて風に揺れやすいので「ゆれる」から名が付いたと聞いており、神奈川の「県の花」に指定されております。
線路ぎわに小さく咲く気弱な山草は影をひそめ、真っ白く香りの強い、しかも堂々と咲く山百合だけが目立つようになります。電車の通るたび、大きな花がゆっくりと揺れ、おしべの先のオレンジ色の花粉袋がそよそよと震えてる姿は、まさに函領の地にふさわしい夏の風情です。
2002年8月 4日
火を天に還して闇の大文字
(還しては、かえして と読む)
8/16の夜、夜空に沈んでいた明星岳の山肌に「大」の文字がくっきりと浮かび華やかな花火が打ち上がります。
箱根大文字焼きはご先祖様の霊を天に送る壮大な火の祭りです。
鮮やかに燃える大の文字が次第に崩れ衰えていくその時、送り火を眺め合掌をします。
火の一点が消えると風も秋、虫が鳴き出し元の静けさにもどり
大文字山は新たな闇に包まれて行きます。
2002年8月21日
玄関に秋の七草あふれしむ

七草粥として食べる春の七草に対し、秋の七草は花の美しさを見て楽しむ草が選ばれております。
秋の七草をよんだ歌としては万葉集の山上憶良の歌が有名です。

秋の野に咲きたる花を指折りかき数ふれば七種の花
※指(おゆびと読む)  ※七種(ななくさと読む)

萩が花、尾花(すすき)、葛花(くず)、撫子の花(なでしこ)、女郎花(おみなえし)、藤袴(ふじばかま)、桔梗(ききょう)
初秋の野に吹きわたる風、姿やさしく揺れる草花、小さい秋見つけた。
道端の草にも季節が宿り静かな趣があります。


2002年9月17日
白萩のしだれ宗祇の終焉地

(宗祇・・・そうぎ 終焉地・・・しゅうえんち)
残暑がうすらいだと思うと急に肌寒い日があり何となく落ち着かないのが九月。
今からちょうど五百年前の九月、連歌師、飯尾宗祇が旅の途中箱根湯本で亡くなっており、去年大遠忌が過ぎたばかりです。俳人芭蕉が敬愛した宗祇法師。句碑や供養塔が早雲寺にあり関東の俳句寺としても有名です。


世に婦るハ更にしぐれのやどり可奈
宗祇

境内を十分ぐらい下るとその終焉の地にたどり着きます。
遊行の宗祇らしく、ここには温泉発掘の地。
白萩がしだれ残暑の影をより長く引きずっておりました。
九月は法師様を忍ぶ思いと共に過ぎて行きます。


2002年10月21日
湿原の夕陽染めぬく赤蜻蛉
(蜻蛉 とんぼと読む)
ススキの穂が風になびきはじめると仙石原の湿原は一斉に花野の世界となります。
丸葉萩(まるばはぎ)、松虫草(まつむしそう)、梅鉢草(うめばちそう)、真薊(まあざみ)、ひよどり花、水辺には、溝蕎麦(みぞそば)、継子の尻拭い(ままこのしりぬぐい)、美しい紫の花をつけた沢桔梗(さわききょう)、深山竜胆(みやまりんどう)、赤い実をつけた蒲ずみ、真弓(まゆみ)、吊花(つりばな)・・・秋の野の花は優しい色ばかり。とんぼ達はわが箱根の秋とばかりに空いっぱい飛び回り、夕焼けが湿原を染めぬくまで大自然の中で遊びます。やがてすすきの穂がほうけて綿毛が飛び立つ頃、とんぼ達は木枯らしのこぼせる風にさらわれるよう里に降りて行きます。
2002年11月13日
白山茶花(シロサザンカ)微笑絶えぬ修道女
山茶花の咲きそめし日の炉を開く
かくれ咲きせし山茶花の白さかな
十一月に入ると肌寒くなり指先を暖めるほどの火が欲しくなる。
夕べの風はこんなにも紅葉をさらってしまったのであろうか。
紫色のたき火の火が、ところどころから上がる。
  大正八年に登山電車が開通して以来、落ち着いたたたずまいを見せている強羅温泉。別荘や保養所が林間に点在し、どの家も庭師を入れてまろく刈り込み、何かと手入れを怠らない。
アシビやアスナロウの針葉樹にまじり、必ずサザンカが植えてあるのは冬中ずっと咲き続ける唯一の花木として、庭師の配慮なのでしょう。
そのサザンカの初花の一輪に出合ったのは強羅公園の生垣であった。
つやつやな緑のツボミは、かすりを着た少女を見るようでもあった。
公園の茶房からしきりにコーヒーを挽く香りが漂う。
このあたりをこよなく愛した文人、森田タマさんや北条秀司さんなどの靴音が、サザンカの垣根越しに聞こえて来るよう・・・・・・。
そんな雰囲気が今でもこの坂道にはある。
2003年1月20日
早発ちの駅伝の客三日かな
新春の風物詩、箱根駅伝。
1月2日、3日と箱根の宿は駅伝の応援に駆けつけた人達でごったがいする。今回は79回目、出場チームが5つ増えて20チーム。3日は復路スタート、箱根は山下りと呼ばれる6区、100mを16秒前後で走る。箱根をステップに世界の華やかな舞台へ羽ばたいていく若者達に、心より熱いエールを贈る。
2003年2月9日
大文字消してまた書く春の雪
2月4日、暦のうえでは立春。1年のうちで最も雪の降りやすい季節。
特に真夜中、急に気温が下がると雪がちらつく。明星ケ岳にある大文字山も雪化粧。
春のおぼろげな山に雪がくっきりと大の字を浮かび上がらせる。半日もたつと毛筆のかすれのように薄れていく。 春は、もう間近。早春の箱根は空気が澄明でおいしい。

2003年2月26日
詫び証文甘酒茶屋の忘れ雪
箱根旧街道にある甘酒茶屋は長持唄にも歌われた江戸時代の立場の一つ。忠臣蔵の芝居で四十七士の一人神崎与五郎が馬子の丑五郎に、いいがかりをつけられ大事の前の小事と、じっとこらえて詫び証文を書いた茶屋とも云われています。この頃になると忘れずに必ず雪が舞う。
あかあかと燃える囲炉裏に手をかざし、舞う雪を眺めつつ甘酒と力餅をいただく。
2003年5月1日
山吹の花に隠れし太閤湯
宮ノ下の底倉の谷にひっそりと涌く天然の露天風呂。秀吉が小田原攻めの折、疲れを癒したと言われている。かっての秘湯・・・・・・・今は文人達の隠れた吟行の地。
この場所に太閤の岩風呂ありと湯煙がたなびく。
箱根の山を飾るまばゆいばかりの山吹の花は今がさかり。武将達の幻の湯浴みの音が今も聞こえる。
2003年5月27日
花菖蒲揺るるは胡弓咽ぶかに
花菖蒲(はなしょうぶ) 胡弓(こきゅう) 咽ぶ(むせぶ)
若葉、青葉、万緑の箱根、花々を揺らす風にも香りがある。
湖の一部であったとされる仙石原の湿原、この辺りは雨が降らなくても大地から湧き出るように夏霧がたつ。
紫色の菖蒲の花は霧に揺れ、霧に溶け、花びらは霧に羽ばたく。
一瞬霧が晴れる。・・・湿原の花たちは眠りから覚め語らいはじめる。さわさわと葉ずれの音、その音は胡弓の響きのようでもあった。
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